No.228 ふたつの『ファン・ジニ』物語
16世紀、朝鮮王朝の時代。貴族の家に生まれ育った美しい娘・チニ(ファン・ジニが正式な名前だがこう呼ばれた)。しかし、彼女には出生の秘密があった。母親は妓生(キーセン)だったのだ。妓生とは、宮中の宴会で歌や舞を見せる芸妓のことで、この時代には身分の低い者として扱われ、身分を変えることはできなかった。チニの母は自分と同じ妓生の道を娘に歩ませたくなかったため、それを隠そうとしたが、事実が明らかになったとき、チニは妓生の道を選ぶこととなる。やがてチニは、その美貌と教養、芸術の才能で世の中から注目される存在となる。
NHK-BSでは、本国である韓国でも大ヒットした彼女のドラマを吹き替えでオンエア中。番組ガイドが出版されるほどの人気で、9月下旬には映画版も公開となる。実在の人物の話なのだけれど、チニにはいろいろなエピソードがあるらしく、単純に視点や切り口が違うということだけでなく、同じ人物を扱っているのに、テレビと映画では展開が異なる。
まずストーリーの序盤、テレビ版ではチニは寺に預けられて育ち、初恋の相手は貴族の家の青年だが、病死してしまう。その後、新たな恋が芽生えたり、横恋慕されたり。一方、映画版だと貴族の家に生まれ育ち、縁談が整う直前に出生の秘密が明らかになり破談に。家にいられず妓生となることを決意したとき、子供時代から親しかった自分より身分の低い奴婢(彼が秘密をばらした張本人)と結ばれ、その後彼に抱いた思いをずっと貫く。
また、テレビ版は芸事、それも舞に精進するチニの姿がクローズアップされ、舞のシーンも大きな見どころ。しかし、映画では2時間強の上映時間に、彼女の波乱万丈の人生(どこまでの話かはここでは割愛するが)を一気に描くため、舞のシーンに重きは置かれない。どちらかというと、貴族の男を相手にしても、決して簡単には言いなりにならず、その教養と知性でやりこめるさまが見どころ。また、愛した男が受ける差別に立ち向かうときは、なんとしてでも彼を助けようとするひたむきさが胸を打つ。
ちなみに、テレビ版のファン・ジニは時代劇『チェオクの剣』で主演、映画では『恋する神父』『デュエリスト』で知られるハ・ジウォンさん、映画版ではドラマ『ホテリアー』『秋の童話』で注目を集めたソン・ヘギョさんが演じている。
ふたつの「ファン・ジニ」の物語。枝葉は違えど、幹と根は同じ。しなやかで美しく、凛として一途に生きた女性の姿は、同性からも異性からも愛される魅力的なキャラクター。見たらきっと、彼女のとりこに。 (2008.08.08 発行)
NHK海外ドラマ『韓国ドラマ ファン・ジニ』
『ファン・ジニ 映画版』公式サイト




